3-3 窒素循環 ~自然界の肥料工場~

野菜に必要な窒素(N)は、もともと地球上に存在している栄養です。
実は空気中の約80%は窒素ガスでできています。しかし、野菜は窒素ガスをそのまま吸収することができないので、そこで活躍するのが土の中の微生物です。

3-1では、化学肥料、有機肥料、自然栽培・自然農、水耕栽培など、育て方が違っても、植物は最終的に主に水に溶けたイオンの形で養分を吸収することを学びました。では、その養分は自然界の中でどのようにつくられ、植物が使える形へ変わっていくのでしょうか。

3-3 窒素循環 ~自然界の肥料工場~

窒素は、空気・土・植物・微生物などの間を、姿を変えながら循環しています。
その途中では、有機物が分解されたり、微生物によって別の形へ変えられたり、植物の根から吸収されたりしながら、再び自然の中へ戻っていきます。

ここでは、野菜の生長に特に重要な窒素(N)を例に、自然界の中で窒素がどのように循環し、植物へ届くのかを順番に見ていきます。

有機物はどこへ行くのか

植物や動物が枯れたり死んだりすると、その体は有機物として土へ還ります。
落ち葉や枯れ草、根、動物のふんなども有機物です。

これらは土の中の微生物などによって少しずつ分解されます。

植物や動物の体に含まれるタンパク質は、「① タンパク質 ⇒ ② アミノ酸 ⇒ ③ アンモニウム」というように分解され、窒素は再び植物が利用できる形へと近づいていきます。

このように、窒素は形を変えながら自然界を循環しています。

また、有機物の一部は、微生物による分解や変化を経て、分解されにくい安定した有機物である腐植として土の中に残ります。腐植は土の粒をまとめ、保水性や保肥性を高めるなど、微生物や植物の根が暮らしやすい土壌環境をつくる働きがあります。


アンモニウムはどこへ行くのか

有機物が分解されてできたアンモニウムは、そのまま植物に吸収されるものもあります。
一方で、土の中では硝化菌などの微生物の働きによって、「① アンモニウム ⇒ ② 亜硝酸 ⇒ 硝酸」のように変化していきます。

この働きを硝化(しょうか)といいます。
アンモニウムや硝酸は水に溶けたイオンとして存在し、植物の根から吸収されます。


植物は窒素をどう使うのか

根から吸収された窒素は、そのまま植物の体になるわけではありません。
植物は、光合成によってつくられた炭素化合物と窒素を利用してアミノ酸をつくり、さらに多くのアミノ酸をつなげてタンパク質をつくります。

①アンモニウム・硝酸
②根から吸収
③アミノ酸
④ タンパク質
⑤ 葉・茎・根など植物の体

タンパク質は、細胞や酵素など植物の体をつくる重要な材料です。
やがて葉や根などが枯れると、それらは再び有機物として土へ還り、微生物による分解が始まります。


窒素はどうやって大気へ戻るのか

土の中にある硝酸の一部は、植物に吸収されるだけではありません。
酸素の少ない土壌などでは、脱窒菌(だっちつきん)の働きによって硝酸が窒素ガスなどへ変化し、大気中へ戻ります。

この働きを脱窒(だっちつ)といいます。

一方、大気中の窒素ガスは、窒素固定菌などの働きによって植物や生きものが利用できる窒素へと変えられます。
こうして、「大気 ⇒ 土 ⇒ 植物 ⇒ 有機物 ⇒ 土 ⇒ 大気」と、窒素は姿を変えながら地球上を循環しています。


有機物と無機物

窒素循環を理解するときに、有機物と無機物の違いを知っておくと分かりやすくなります。

有機物

生きものに由来する、炭素を中心とした物質です。

落ち葉、枯れ草、植物の根、動物のふん、タンパク質、アミノ酸などが含まれます。土の中では微生物などによって分解され、少しずつ姿を変えていきます。

無機物

アンモニウムや硝酸など、植物が根から吸収できる養分の多くは無機物です。

植物は、土の中の有機物をそのまま肥料として吸収するのではなく、基本的には微生物などによって分解・無機化された養分を、水に溶けたイオンの形で根から吸収します。

① 有機物
② 微生物などが分解・変換
③ 無機養分(イオン)
④ 根から吸収
⑤ 植物の体をつくる
⑥ 再び有機物として土へ還る

この循環こそが、自然界の中で窒素が受け継がれていく基本の仕組みです。

コラム
~ 森には肥料袋がない ~

森には肥料袋をまく人はいません。

それでも木々は何十年、何百年と生き続けています。それは落ち葉や枯草が土へ還り、微生物が分解し、再び植物の栄養となる循環があるからです。

野菜づくりも本来は同じです。

土の中の微生物が働き続けられる環境を整えることで、土は自ら肥料をつくり続けることができます。