3-4 無肥料と無施肥

自然栽培は「無肥料」と言われることがあります。
しかし、正確には「無施肥」という考え方に近い栽培方法です。

野菜は肥料(栄養)なしでは育ちません。
植物は、窒素(N)・リン酸(P)・カリ(K)をはじめとする必須元素を吸収して生長します。
これらの栄養は、野菜が生きていくために欠かせません。

違いは、その栄養をどこから得るかです。
慣行栽培や有機栽培では、外から肥料を施し、野菜へ必要な栄養を補います。

一方、自然栽培や自然農では、落ち葉や雑草などの有機物を微生物が分解し、土の中でつくられた養分を野菜が利用します。つまり、「肥料を与えない」のではなく、「外から施肥せず、土がつくる肥料を利用する」という考え方です。

また、土づくりが十分でない畑では、最初から無施肥を目指すのではなく、有機物や堆肥を活用しながら土を育て、少しずつ自然の循環が働く環境へ近づけていくことも大切だと考えています。


主な栽培方法の違い

野菜づくりにはさまざまな栽培方法があります。
それぞれ目的や考え方が異なり、優劣をつけるものではありません。

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栽培方法化学肥料有機肥料農薬特徴
慣行栽培安定した収穫と大量生産を重視
有機栽培△※有機物を活用し、土づくりを重視
自然栽培土の力と自然の循環を活かす
自然農自然の営みを尊重し、人の手を最小限にする

※有機JASで認められた農薬は使用できます。


自然農・自然栽培・新しい農業の考え方

「自然農」「自然農法」「自然栽培」は似た言葉ですが、それぞれ誕生した背景や考え方が少し異なります。

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年代提唱者・代表呼称考え方・特徴
1935年頃岡田 茂吉 氏自然農法土が本来持つ生命力を引き出し、無肥料・無農薬を基本とする。自然の力を尊重する農法。
1975年福岡 正信 氏自然農法(自然農)「耕さない・肥料を与えない・農薬を使わない・除草しない」を基本とし、人為をできるだけ減らす農法。代表作『自然農法 わら一本の革命』。
1980〜1990年代川口 由一 氏自然農福岡氏の思想を受け継ぎながら、毎日の観察を重視し、自然に寄り添う実践的な農を提唱。
1990年代〜木村 秋則 氏自然栽培肥料や農薬に頼らず、土の力を引き出して育てる栽培方法。必要に応じて耕起や草刈りなども行い、土づくりを重視する。
2000年代〜岡本 よりたか 氏自給農自給自足を基本に、地域資源を循環させながら暮らしと農を一体で考える。自然栽培や自然農の考え方を取り入れた実践。
2010年代〜世界的な考え方リジェネラティブ(大地再生)農業土壌・生態系・生物多様性を再生・回復させることを目的とした農業の考え方。土壌炭素の蓄積、水循環の改善、生物多様性の向上などを重視する。

※現在では区別しやすくするため、福岡正信氏は「自然農」、岡田茂吉氏は「自然農法」と呼ばれることが一般的ですが、福岡氏自身は著書の中で「自然農法」という表現も使用しています。


その他の栽培方法

この表で紹介したもの以外にも、菌ちゃん農法、炭素循環農法、ガッテン農法、道法スタイル(垂直仕立て)など、さまざまな考え方や栽培手法があります。どの農法が正しく、どれが間違っているというものではありません。

大切なのは、農法や栽培方法の名前にこだわることではなく、その背景にある考え方を理解し、自分の畑や環境に合わせて活かすことです。その中で、自分らしい野菜づくりや自然との向き合い方を見つけていきましょう。

ポイントは、「畑を見る。」「土を見る。」「野菜を見る。」「微生物を育てる。」「土(微生物・根)が肥料をつくる。」「野菜が育つ。」という自然の循環を理解し、その土地に合った環境を育てることが大切です。