2-1 微生物とは

目には見えないほど小さな生き物が、
土の中でどんな働きをしているのでしょうか。

微生物は、肉眼では見えないほど小さな生き物です。
土の中には、細菌放線菌(ほうせんきん)、真菌(しんきん)、乳酸菌(にゅうさんきん)など、たくさんの微生物が暮らしています。

私たちの目には見えませんが、土1gの中には、数億もの微生物がいることもあります。
落ち葉や雑草を分解し、養分をつくり、土を豊かにする。

野菜が元気に育つ土の中では、今日もたくさんの微生物たちが働いています。

細菌(さいきん)

土の中で最も数が多く、種類も多い微生物のひとつです。
とても小さく、条件が整うと活発に増えながら、有機物を分解したり、植物が利用できる養分の循環に関わったりしています。

植物の根の周りにある根圏(こんけん)にも多く集まり、根から出る糖やアミノ酸などを利用して暮らしています。
植物の生育を助けるものがいる一方で、病気を起こすものもいるため、細菌も「多ければ多いほどよい」というものではありません。


放線菌(ほうせんきん)

細菌の仲間ですが、菌糸のような細長い形に成長するものが多い微生物です。
森や畑の土を掘ったときに感じる、土らしい香りにも関わっています。

落ち葉や枯れ草などの有機物を分解し、ほかの微生物が分解しにくい成分の分解にも関わります。
また、ほかの微生物の増殖を抑える物質をつくる種類もあり、さまざまな微生物と関わりながら土の中で暮らしています。


真菌(しんきん)

細菌とは異なるグループの微生物で、カビの仲間である糸状菌や酵母などが含まれます。
土の中では、有機物を分解するものや、植物の根と共生するものなど、さまざまな真菌が暮らしています。

菌糸(きんし)を伸ばす種類は、土の粒や有機物の間を広く伸びながら活動します。
植物の生育を助けるものがいる一方で、病気を起こすものもあり、土の中では細菌や放線菌など、ほかの微生物とともに複雑な生態系をつくっています。

糸状菌(しじょうきん)

真菌の仲間で、白い糸のような菌糸を伸ばしながら生きています。落ち葉や木、稲わらなどを分解し、土の団粒構造(だんりゅうこうぞう)づくりにも関わっています。

落ち葉の裏などを見ると、糸状菌の菌糸が白い糸のように広がっていることがあります。ただし、糸状菌には植物に病気を起こすものもあり、特定の菌だけが増えればよいわけではありません。さまざまな微生物が共存することが大切です。

酵母(こうぼ)

真菌の仲間で、パンやお酒づくりにも利用される微生物です。糖を利用して発酵する性質があり、土や植物の表面など自然界にも広く存在しています。

土の中では、植物から出る糖や有機物などを利用しながら活動し、ほかの微生物とも関わりながら有機物の分解や養分循環を支えています。

菌根菌(きんこんきん)

植物の根と共生する真菌の仲間です。
根だけでは届かない場所まで菌糸を伸ばし、水や養分の吸収を助けています。

その代わりに植物は、光合成でつくった糖を菌根菌へ与えています。菌根菌は土壌生態系の健康状態を示す重要な存在のひとつです。


乳酸菌(にゅうさんきん)

細菌の仲間で、糖を利用して乳酸をつくる微生物の総称です。
漬物やヨーグルトなどの発酵食品でよく知られていますが、植物の表面や土など自然界にも存在しています。

乳酸をつくることで周囲の環境を酸性に傾け、ほかの微生物の活動にも影響を与えます。
畑では微生物の一員として有機物の分解や発酵に関わりますが、乳酸菌だけを増やすのではなく、さまざまな微生物が共存できる環境をつくることが大切です。


線虫(せんちゅう)

線虫は微生物ではありませんが、土の中で重要な役割を果たす小さな生き物です。
細菌や真菌を食べ、その排せつ物が植物の養分になります。

土の中の養分循環を支える「養分循環係」でもあります。

コラム 
~人間の腸と土はよく似ている~

近年、人間の健康は腸から始まるといわれています。
腸の中には多くの腸内細菌が暮らし、食べ物を分解したり、栄養をつくったり、免疫を支えたりしています。

実は植物にも、それによく似た世界があります。それが根圏(こんけん)です。

根圏とは、根の周り数mmほどの土の世界のこと。ここには細菌、放線菌、真菌、菌根菌、線虫など、たくさんの生き物が暮らしています。

植物は光合成でつくった炭素化合物の一部を根から放出し、微生物たちは養分循環などを通して植物の生育を支えています。人間の腸内細菌と同じように、植物も微生物と協力しながら生きているのです。

「人間の健康が腸から始まるように、野菜の健康は土の中にある根圏から始まります。」

根圏とは、根と微生物が共生する小さな土壌空間のことです。

土を育てることは、微生物を育てること。
そして微生物を育てることが、元気な野菜を育てることにつながるのです。

目に見えない土の世界には、私たちの知らない世界が広がっています。