3-5 土の生態系が肥料をつくる仕組み

ここまで、① 土を知る・育てる、② 微生物を育てる、③ 土(微生物・根)が肥料をつくるについて学んできました。

では実際に、土の中では誰が肥料をつくっているのでしょうか。
答えは、「土の生態系」です。

土の中には、有機物をはじめ、目に見えない微生物から小さな土壌生物まで、数え切れないほどの仲間が暮らしています。
それぞれが役割を分担しながら、有機物を分解し、空気中の窒素を取り込み、野菜が吸収できる養分へと変えていきます。
まるで一つの大きな工場のように、土の中では毎日休むことなく「肥料づくり」が行われています。


土の生態系の役割

有機物

落ち葉や雑草、稲わら、もみ殻、米ぬかなどの有機物は、土の生きものたちのエサであり、肥料づくりの原料になります。自然界では、有機物が供給されることで微生物や土壌生物が活動し、養分の循環が始まります。

分解菌(細菌・放線菌・糸状菌など)

有機物を分解し、野菜が利用できる養分へと変えていきます。自然界の「分解工場」の中心となる存在です。

窒素固定菌(ちっそこていきん)

空気中の約80%を占める窒素ガスを、植物が利用できる形へと変える微生物です。自然界に新たな窒素を供給する、とても重要な役割を担っています。

根は養分や水を吸収するだけではありません。光合成で作られた糖を根から分泌し、微生物のエサを与えながら、お互いに助け合っています。

菌根菌(きんこんきん)

植物の根と共生し、リン酸や水分などを効率よく運びます。その代わりに植物から糖を受け取り、共に生きています。

ミミズ・ダンゴムシ・トビムシなどの土壌生物

落ち葉や枯草を細かく砕き、微生物が分解しやすい状態へと変えます。さらに土を耕し、団粒構造をつくることで、空気や水が通りやすい健康な土づくりにも大きく貢献しています。


米ぬかは「肥料」より「微生物のエサ」

米ぬかは、肥料取締法では「特殊肥料」に分類されています。
しかし、野菜へ直接栄養を与える肥料というよりも、微生物を元気にするためのエサとして考えています。

微生物が元気に働けば、有機物の分解が進み、土の中で野菜が利用できる養分がつくられていきます。
つまり、米ぬかは野菜を育てるための肥料ではなく、土を育てる微生物のエサとして捉える方が、自然の仕組みに近いと言えるでしょう。


土が育てば、肥料は土の中で生まれる

健康な野菜を育てているのは、人だけではありません。

有機物を原料に、分解菌や窒素固定菌、根、菌根菌、ミミズなど、多くの生きものたちが力を合わせて肥料をつくり、その養分を野菜へ届けています。私たちの役割は、肥料を与え続けることではなく、土の生態系が元気に働ける環境を整えることです。

それが「土を育てる」ということ。そして土が育てば、野菜が育つ。
その野菜を人がおいしくいただき、再び自然へ還る。

野菜を育てることは、自然の循環を育てること。
それが、私たちが大切にしている野菜づくりです。土の生態系によって養分がつくられても、それだけで野菜が育つわけではありません。

野菜が健やかに育つためには、土、光、水、空気、温度などの環境も欠かせません。

次の章では、「野菜が育つ仕組み」について考えていきましょう。

肥料とは、野菜が育つための養分。
その養分は、微生物や根の働きによって土の中でも生み出され、循環しています。