4-3 野菜の身体

私たちの身体に、口・胃・肺・心臓など、それぞれ異なる役割を持つ器官があるように、野菜の身体にも、それぞれの役割を持つ器官があります。

根は土の中から水や養分を吸収し、茎は身体を支えながら水や養分、糖などを運びます。
葉は光を受けて糖をつくり、花・実・種は次の世代へ命をつないでいきます。それぞれが別々に働いているのではなく、互いにつながりながら、一つの生命として生きています。

野菜の身体は、大きく分けると、「根・茎・葉・花・実・種」 からできています。

根の役割

根は、単なる水や養分の吸い口ではなく、土の生態系と野菜をつなぐ大切な場所なのです。

4-3_根
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根は土の中に広がり、野菜の生長を支える大切な器官です。

  • 水を吸収する
  • 養分を吸収する
  • 野菜の身体を支える
  • 植物によっては養分を蓄える
  • 根分泌物(こんぶんぴつぶつ)を出し、微生物と関わる

根をつくる主な部分

生長点(せいちょうてん)

新しい細胞をつくる場所
根の先端近くにあり、細胞分裂を繰り返して新しい細胞をつくります。つくられた細胞が伸びることで、根が土の中へ伸びていきます。

根冠(こんかん)

根の先端と生長点を守る部分
根の一番先にあり、根が土の中を進むときに、その内側にある生長点が傷つかないように守ります。

根毛(こんもう)

水や養分を吸収する細い毛
根の先端より少し後ろに生える、細い毛のような組織です。土と接する面積を広げ、水や養分を効率よく吸収します。

根圏(こんけん)

根と微生物が関わる土の空間
根のすぐ周りにある、根の影響を強く受ける土壌空間です。
根分泌物を利用する多くの微生物が集まり、根と微生物が互いに影響し合っています。

根分泌物(こんぶんぴつぶつ)

根から土へ出される物質
糖・アミノ酸・有機酸など、根から周りの土へ出される物質です。微生物のエサになったり、土の中の養分を利用しやすくしたりします。

菌根菌(きんこんきん)

根と助け合って生きる菌
植物の根と共生し、根だけでは届きにくい場所から水やリン酸などを運びます。その代わりに、植物から糖などを受け取ります。


茎の役割

茎は、野菜の身体を支える柱であり、全身をつなぐ物流網でもあるのです。

4-3_茎
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茎は、根と葉、花、実をつなぐ野菜の身体の中心です。

  • 葉や花、実を支える
  • 水や養分を運ぶ
  • 葉でつくられた糖を運ぶ
  • 新しい葉や茎をつくる

茎をつくる主な部分

導管(どうかん)

水と養分を運ぶ通り道
根から吸収した水や無機養分を、茎・葉・花・実などの地上部へ運びます。

師管(しかん)

糖を必要な場所へ運ぶ通り道
葉でつくられた糖を、根・新芽・花・実・生長点など、糖を必要としている場所へ運びます。
※光合成でつくられた糖は、主にショ糖(しょとう)などの形で師管を移動します。

維管束(いかんそく)

導管と師管などが集まった通り道
導管と師管などがまとまった組織です。
双子葉類では輪のように並び、単子葉類では茎の中に散らばって並ぶものが多く見られます。

髄(ずい)

茎の中央にある柔らかい組織
多くの双子葉植物の茎の中心にあり、水分や養分を蓄えたり、茎の内側を満たしたりしています。

生長点(せいちょうてん)

新しい茎や葉をつくる場所
茎の先端や脇芽にあり、細胞分裂を繰り返して新しい茎や葉をつくります。


葉の役割

葉は、太陽のエネルギーを受け取り、野菜の身体をつくる材料を生み出す場所です。

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葉の大切な役割は、光を受けて光合成を行い、糖をつくることです。

  • 光合成を行う
  • 二酸化炭素や酸素を出し入れする
  • 水分を蒸散する
  • つくった糖を他の器官へ送り出す

葉をつくる主な部分

葉緑体(ようりょくたい)

光合成を行う場所
葉の細胞の中にあり、光のエネルギーを利用して、水と二酸化炭素から糖をつくります。

クチクラ層

葉の表面を守る保護層
葉の表面を覆い、水分が失われすぎることを防ぎます。病原菌や外部からの刺激から葉を守る働きもあります。

葉脈(ようみゃく)

水・養分・糖の通り道
導管と師管などからできています。根から運ばれた水や養分を葉へ届け、葉でつくられた糖を他の器官へ送り出します。

気孔(きこう)

気体と水蒸気の出入り口
葉の表面にある小さな穴です。光合成に必要な二酸化炭素を取り込み、酸素や水蒸気を外へ出します。
植物も昼夜を通して呼吸し、酸素を取り込んで二酸化炭素を出しています。

蒸散(じょうさん)

葉から水分を外へ出す働き
主に気孔から水蒸気を放出する現象です。根から葉へ水を運ぶ流れを支え、葉の温度を調節する働きもあります。


花の役割

花は、生殖生長と命の循環をつなぐ入り口です。

4-3_花

花は、植物が次の世代へ命をつなぐための器官です。

  • 花粉をつくる
  • 花粉を受け取る
  • 受粉・受精する
  • 実や種をつくる

花をつくる主な部分

雄(お)しべ

花粉をつくる部分
おしべの先にある葯(やく)で花粉がつくられます。

雌(め)しべ

花粉を受け取り、実や種をつくる部分
先端の柱頭(ちゅうとう)が花粉を受け取り、その下に子房があります。

子房(しぼう)

実になるもとの部分
めしべの根元にある部分です。多くの植物では、受精後に子房が発達して実になります。

胚珠(はいしゅ)

種になるもとの部分
子房の中にあり、受精後に発達して種になります。

花蕾(からい)

まだ開いていない花のつぼみ
ブロッコリーでは、主に花が咲く前の花蕾と若い茎を食べています。
カリフラワーでは、花になる前の未発達な花序(かじょ)の部分を食べています。

花から実と種ができるまで

カボチャやキュウリなどは、雄花(おばな)と雌花(めばな)が別々に咲きます。雄花でつくられた花粉が、ハチなどによって雌花の柱頭へ運ばれることで受粉します。

  1. おしべで花粉がつくられる
  2. 花粉がめしべの柱頭に付く(受粉)
  3. 花粉管が伸び、胚珠の中で受精する
  4. 子房が実になり、胚珠が種になる

実(果実)の役割

実は、人のためにつくられているのではなく、植物が命をつなぐ仕組みの中で生まれるものなのです。

4-3_実
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実は、多くの場合、花の子房が受精後に発達してできる器官です。

  • 種を育てる
  • 種を守る
  • 種を広げる手助けをする

実をつくる主な部分

果皮(かひ)

種を包んで守る部分
子房の壁が発達してできる部分です。乾燥や外部からの傷などから、中の種を守ります。

果肉(かにく)

実の中の柔らかい部分
水分や糖などを多く含む部分です。動物に食べてもらうことで、種を離れた場所へ運ぶ役割を持つものもあります。

種

次の世代となる新しい命
実の中で育ち、成熟すると発芽できる状態になります。
種は、動物に食べられたり、風や水に運ばれたり、熟した実が地面へ落ちたりすることで、別の場所へ広がっていきます。

トマト・ナス・ピーマン・キュウリ・オクラ・カボチャなどの果菜類では、この実の部分を食べています。
私たちにとっては収穫物ですが、植物にとって実をつけることは、次の世代へ命をつなぐための大切な営みです。


種の役割

4-3_種
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種は、植物が次の世代へ命をつなぐための器官です。植物学では、種子(しゅし)とも呼ばれます。

種の中には、新しい植物になるための身体と、発芽直後の生長を支える養分が入っています。

  • 新しい植物のもとを守る
  • 発芽直後の生長を支える
  • 発芽できる環境になるまで命をつなぐ
  • 別の場所へ広がり、次の世代を残す

種をつくる主な部分

種皮(しゅひ)

種の中を守る皮
種の外側を覆い、乾燥や傷、外部からの刺激から中の胚を守ります。

胚(はい)

新しい植物のもと
将来、根・茎・葉になる部分を持った、小さな植物の身体です。

子葉(しよう)

発芽直後の生長を支える葉
胚の一部で、発芽直後の生長を支えます。インゲンやダイズなどでは、子葉の中に発芽に必要な養分を蓄えています。

胚乳(はいにゅう)

発芽に使う養分を蓄える組織
イネやトウモロコシなどでは、胚乳に多くの養分が蓄えられています。植物によって、養分を子葉に蓄えるものと、胚乳に蓄えるものがあります。

胚根(はいこん)

最初に伸びる根
発芽すると、主に下へ伸びて土の中へ入り、水や養分を吸収し始めます。

幼芽(ようが)

茎や葉になる部分
発芽後に上へ伸び、新しい茎や葉をつくります。

休眠

発芽せずに待っている状態
発芽に適した条件がそろっても、すぐには発芽せずに待っている状態です。
寒さや一定期間の乾燥などを経験することで休眠が解け、発芽できるようになる種もあります。

※すべての種が休眠するわけではありません。


発芽までの流れ

発芽には、主に水・空気・適した温度が必要です。
種類によっては、光が当たることや、反対に光を遮ることが発芽に影響します。

  1. 発芽に必要な条件が整うまで待つ
  2. 水を吸ってふくらむ
  3. 空気と適した温度によって、呼吸や細胞の活動が活発になる
  4. 胚根が先に伸び、土の中へ入る
  5. 幼芽が地上へ伸び、葉を開く

子葉の数と発芽のしかた

植物は、種の中にある子葉の数によって、一般に双子葉類(そうしようるい)と単子葉類(たんしようるい)に分けられます。
また、発芽したときの子葉の位置によって、地上子葉型(ちじょうしようがた)と地下子葉型(ちかしようがた)に分けられます。この二つを組み合わせると、次の4つの型に整理できます。

※同じ科の中でも発芽のしかたが異なる場合があるため、ここでは主に見られる科や代表的な野菜を紹介します。

1-1:双子葉類・地上子葉型

2枚の子葉が地上へ持ち上がる型です。
地上へ出た子葉は発芽直後の生長を支え、緑色になって光合成を行うものもあります。

主に見られる科:ナス科・ウリ科・アブラナ科・アオイ科など
ナス・トマト・ピーマン、キュウリ・カボチャ、ダイコン・キャベツ、オクラなどがこの型です。
マメ科では、インゲンやダイズなどがこの型に含まれます。

1-2:双子葉類・地下子葉型

2枚の子葉が地中に残り、芽だけが地上へ伸びる型です。地中に残った子葉は、蓄えている養分を芽や根へ送ります。

主に見られる科:マメ科の一部
エンドウやソラマメなどがこの型です。同じマメ科でも、種類によって子葉の出方が異なります。

2-1:単子葉類・地上子葉型

1枚の細長い子葉が地上へ伸びる型です。
ネギ類では、子葉が弓のように曲がりながら地上へ現れ、その後、子葉の根元付近から本葉が伸びてきます。

主に見られる植物:ネギ類
ネギ・タマネギ・リーキなどがこの型です。

2-2:単子葉類・地下子葉型

1枚の子葉が種の中や地中に残り、芽が地上へ伸びる型です。イネ科では、子葉にあたる胚盤(はいばん)が種の中に残り、胚乳の養分を吸収して芽へ送ります。

主に見られる科:イネ科
イネ・トウモロコシ・コムギ・オオムギなどがこの型です。
双子葉類・単子葉類は、主に子葉の数による分類です。地上子葉型・地下子葉型は、発芽後に子葉が地上へ出るか、地中や種の中に残るかによる分類です。

※ジャガイモ・サツマイモ・サトイモ・ショウガなどは、一般的な栽培では種子ではなく、種イモ・つる苗・球茎・地下茎などから育てます。
そのため、ここでの発芽型の例には含めていません。

種は、種 → 根・茎・葉 → 花 → 実 → 種と、再び次の世代へ命をつないでいきます。
私たちが野菜を育てるということは、この大きな生命の循環の一部分に関わることでもあります。


身体の中には二つの大きな流れがある

野菜の身体の中では、水・養分・糖などが絶えず移動しています。大きく見ると、二つの流れがあります。

水と養分の流れ

土 → 根 → 導管 → 茎 → 葉・花・実など

根から吸収された水と養分は、主に導管を通って地上部へ運ばれます。葉に届いた水の一部は光合成などに使われ、多くは気孔から水蒸気として外へ出ていきます。

② 糖の流れ

葉 → 師管 → 根・新芽・生長点・花・実など

葉でつくられた糖は、主にショ糖などの形で師管を通り、生長している場所や、糖を必要としている場所へ運ばれます。
根も、葉から送られてきた糖を利用して生きています。その一部は根分泌物として根の周りへ放出され、根圏の微生物との関係にも使われています。

つまり、

根が葉を支え、葉が根を支えている。
野菜の身体は、上と下に分かれているのではなく、一つにつながって生きているのです。